ワルツ第9番 (ショパン)

●クラシック音楽情報

「告別」のワルツ、その誕生と背景

フレデリック・ショパンが1835年に作曲したこのワルツは、彼の作品の中でも特に人気の高い曲の一つです。日本では「告別」の愛称で親しまれていますが、この副題はショパン自身によるものではありません。

ショパンは当時、マリア・ヴォジンスカという女性と恋に落ちていました。しかし、身分の違いやショパンの病弱な体質などから、二人の結婚は許されませんでした。1835年、ショパンは療養のためにドレスデンを訪れていましたが、マリアとの別れを惜しみつつ、ワルツ第9番を作曲したと言われています。

そのため、「告別」という副題は、マリアとの別れを象徴していると考えられています。曲調は、優しく切ない旋律と、華やかで優雅な旋律が交互に現れ、愛する人との別れ際の複雑な感情を表現しているかのようです。

楽曲の構成と特徴

ワルツ第9番は、三部形式(A-B-A)で構成されています。

A部: 変イ長調。穏やかで叙情的な旋律が特徴です。
B部: 変ホ長調。華やかで軽快な旋律が特徴です。
A部(再現部): 変イ長調。A部の旋律が繰り返されますが、コーダが追加されています。

この曲は、ショパンのワルツの中でも比較的演奏しやすい曲とされています。しかし、単純な技巧だけで演奏するのではなく、ショパンの繊細な感情表現を理解し、表現することが重要です。

演奏のポイント

テンポ: Allegrettoと指示されています。軽やかで優雅なテンポで演奏しましょう。
強弱: ショパンの音楽は、強弱の変化が非常に重要です。楽譜に書かれた強弱記号を carefully に守り、繊細な表現を心がけましょう。

ペダル: ペダルは、音を legato につなげたり、響きを豊かにしたりするために使用します。しかし、ペダルを使いすぎると音が濁ってしまうため、適切なタイミングでペダルを踏むことが重要です。

歌唱性: ショパンの音楽は、歌のように旋律を奏でることが大切です。フレーズを意識し、滑らかに legato で演奏しましょう。

感情表現: 「告別」のワルツと呼ばれるように、この曲は、愛する人との別れ際の複雑な感情を表現しています。演奏者は、その感情を理解し、音楽に込めて表現する必要があります。

ワルツ第9番の影響

ワルツ第9番は、ショパンの死後、1855年に出版されました。出版後すぐに人気を博し、多くのピアニストに演奏されるようになりました。また、この曲は、映画やドラマ、CMなどにも使用され、広く知られています。

後世への影響

ショパンのワルツ第9番は、その美しい旋律と情感豊かな表現で、多くの人々に愛され続けています。この曲は、後世の作曲家たちにも大きな影響を与え、多くの作品に引用されています。

参考文献

『ショパン: ワルツ集』全音楽譜出版社
『ショパンの生涯』吉田秀和著、岩波新書
『ショパン: 音楽と生涯』ジェレミー・ニコラス著、春秋社

視聴のおすすめ

ヴラディーミル・アシュケナージ演奏

マルタ・アルゲリッチ演奏

クリスティアン・ツィメルマン演奏

ショパンのワルツ第9番は、彼の繊細な感性と卓越した作曲技法が凝縮された名曲です。ぜひ、色々なピアニストの演奏を聴き比べて、その魅力を味わってみてください。